映画『心理学者 原口鶴子の青春 100年前のコロンビア大留学生が伝えたかったこと』 泉 悦子監督(2007年)
100年前に先駆的な仕事を残した日本人の女性心理学者がいたことを,ご存知でしょうか.
原口鶴子(1886-1915)は明治末期にアメリカに留学して当時の最先端の心理学研究を行いました.
日本女子大学で心理学を知り,卒業後にニューヨークに渡りコロンビア大学大学院に入学しました.
効果の法則や教育測定の創始者として有名なL.ソーンダイクや,ライプツィヒ大学のW.ヴントのもとに留学してメンタルテストを考案したJ.M.キャッテルらに学び,日本女性として初めて心理学を専攻して博士号を取得しました.
女性の社会進出の歴史を考えるうえで,画期的な事績です.
大正元年に帰国して研究や教育や出版のために尽力していたのですが,不運なことに結核を患いました.治療の甲斐なく,二人の幼子を残して29歳の若さで亡くなりました.さぞ,無念だったことでしょう.
日本の学問にとって大きな損失となりました.
主要な著作に『心的作業及び疲労の研究』や 『楽しき思い出』があります.
たったひとりアメリカで新しい学問を探究した彼女の勇気や自律心,先進的な国際性,彼女が提示した新しい時代の女性像は,人々に明るい希望を与えました.
『楽しき思い出』は両大戦間から戦後まで広く読まれ,当時の若者を鼓舞したのです.
時がたつにつれ,やがて原口を知る人は稀になりました.しかし,1本の映画が改めて彼女に光を当ててくれました.
原口鶴子の生涯を描いたドキュメンタリー映画が各地で上映され,好評を博しています.
『心理学者 原口鶴子の青春 100年前のコロンビア大留学生が伝えたかったこと』 泉 悦子監督(2007年,テス企画)
この作品は2008年に山路ふみ子映画賞福祉賞を受賞しました.
2007年に完成して以来,各地で上映会が開催されています.詳細は下記のサイトをご参照ください.
http://www.sepia.dti.ne.jp/tess/
アマゾンでDVDを購入することもできます.
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