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2017年5月

2017年5月27日 (土)

「繰り返し水責めを受け,小さな木箱に入れられたズベイダ容疑者はテロ情報を知らなかった」:CIA機密文書にみるテロ容疑者への心理学的拷問

 2002年3月にCIAはパキスタンでアブ・ズベイダ容疑者を捕捉しました.
 9.11同時多発テロの後にアメリカが始めた「テロとの戦い」において,アメリカの軍事・情報当局が最初にあげた大てがらだ,と喧伝されました.

 ブッシュ大統領(当時)が記者会見をひらき,我々はアルカイダ幹部を捕まえた,もう彼がテロを起こすことはない,と述べた場面がこのとき,繰り返し放映されました.(しかし,その後の捜査で同容疑者はアルカイダ幹部ではないことが明らかになりました.)

 ズベイダ容疑者は「CIA秘密航空便」でパキスタンからタイの秘密拘禁施設に移送されました.CIAは情報収集を主務とする機関ですので,テロ容疑者を収容して尋問する施設を備えていませんでした.
 そこで,アジアやアフリカやヨーロッパの各地に現地の軍事・情報当局との連携のもと,テロ容疑者の収容所を設営しました.隠密の施設のため,公的文書や地図に載ることのない「CIAブラックサイト」です.
 この拘禁施設で戦争捕虜の人道的処遇を定めたジュネーブ条約国連拷問禁止条約に違反する「過酷尋問」が行われました.ズベイダ容疑者がその第1号になりました.


 同容疑者に過酷尋問を行ったのが,アメリカ空軍出身の2名の軍事心理学者です.彼らは過酷さの程度を異にする各種の尋問技法を組合わせて「強化尋問技法」を開発し,自らアルカイダ幹部らに尋問を行いました.
 「強化」された尋問技法とは通常,捜査機関に認められている尋問技法の範疇を超えて被尋問者の心身にダメージを与える尋問技法だ,という意味です.

 拷問に相当する過酷な尋問技法として悪名をはせている「水責め(water-boarding)」も彼らが「強化尋問技法」の一つとして採用し,ズベイダ容疑者に初めて行いました.

 同容疑者はその後,米軍がキューバに設営したグアンタナモ収容所に移送され,現在もそこに囚われています.同容疑者を含め,テロ容疑を審理する裁判は遅々として進んでいません.
 最近,同容疑者の弁護団がCIAに尋問に関する機密文書の開示を求め,裁判所の審理をへて公開されました.
 機密文書によって彼への尋問が,従前から知られていたよりもいっそう過酷なものだったことが明らかになりました.

 パキスタンで拘束されたズベイダ容疑者はFBIの尋問官によって,通常のラポートを重んじる技法を用いて尋問され,彼が知っていた情報を供述していたそうです.
 しかし,その後,CIAによってタイの秘密拘禁施設に移され,軍事心理学者によって強化尋問技法を用いて過酷尋問を受けました.
 水責めを受け,棺桶のような木箱に長時間拘禁され,次に棺桶の半分ほどの大きさ(!)の木箱に長時間,入れられたそうです.こうした尋問を繰り返し受けたのですが,前にFBIの尋問官に開示した以上の情報を彼は知らなかった,と弁護団は指摘しています.


 この問題に関心をお持ちの方は,下記をご参照ください
グアンタナモ収容所でもっとも有名なズベイダ容疑者は繰り返し水責めを受け,小箱に拘禁された.しかしこの拷問技法はテロ対策に役立つ情報をもたらさなかった (Failed Torture Methods Used on Guantanamo's Most Famous Detainee
Repeatedly waterboarded and confined in a small box, Zubaydah failed to provide any information of value.By Ken Klippenstein, Joseph Hickman / AlterNet.May 15, 2017)
(http://www.alternet.org/grayzone-project/failed-torture-guantanamo)


 CIAの機密文書も,上のサイトで公開されています.尋問の生々しい詳細が記録されています.

  対テロ戦争における容疑者の尋問はこのように詳細に記録されました.
 ビデオも撮影されました.2004年ころからアメリカでテロ容疑者や捕虜への虐待が問題になり,CIAによる過酷尋問にも疑いが向けられるようになりました.

 ズベイダ容疑者への尋問を記録したビデオなど,多数のビデオテープが破壊されました.あまりに過酷な映像が人目に触れるのを恐れたのでは,と指摘されています.

 トランプ政権がCIA副長官に指名したジナ・ハスペル氏は,9.11後に過酷尋問を伴う作戦を指揮した,と報道されています.同氏はこの問題の詳細を熟知しているのでしょう.





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