BBCラジオの番組『良い心理学者,悪い心理学者』:テロ容疑者への「心理学的拷問」
BBCのラジオ4が9.11同時多発テロの後,アメリカが戦う「テロとの戦争」において,心理学者が加担してテロ容疑者に行われた「過酷尋問(心理学的拷問)」を問う番組を放送しました.
「良い心理学者,悪い心理学者(Good Psychologist, Bad Psychologist)」
BBC Radio 4.8月30日に放送.
この番組は下記のサイトで公開されています.
http://www.bbc.co.uk/programmes/b092fwzr
2009年にオバマ米大統領(当時)が「我々は拷問を行った」と記者会見で述べた音声や,パキスタンでアルカイダ幹部を捕捉する作戦を指揮したCIA要員へのインタビュー,拷問を受けた被害者の肉声などが取り上げられています.
「強化尋問技法」を開発してテロ容疑者に自ら過酷尋問を行ったアメリカの軍事心理学者も登場します.アメリカの法律家がこの技法による尋問は拷問ではないと認定した,だから自分は罪を問われない,と主張しています.
強化尋問技法を支える理論になった「学習性無気力」と,この現象をイヌを被験体とする学習心理学実験を行って見いだし,理論化したアメリカの心理学者マーティン・セリグマンも取り上げられています.
ポジティブ心理学の創始者として日本でも有名になりました.アメリカ心理学会会長を務め,存命する北米の心理学者の中ではもっとも著名なひとりです.
また,アメリカ心理学会とアメリカの心理学者がテロ容疑者への過酷尋問に加担した実態を解明し,同学会会員が「国家安全保障に係わる尋問」に関与しないよう同学会の倫理指針を改訂する活動を行ったアメリカの心理学者も,インタビューに答えています.
番組のタイトルに含まれる「良い心理学者」は彼(女)らを指しているのでしょう.「悪い心理学者」はもちろん,強化尋問技法を開発して尋問を行った軍事心理学者や,彼らに助言しサポートした心理学者たちです.
30分足らずの短い番組ですが,対テロ戦争における心理学的拷問の争点を手際よく説明しています. (英語音声のみ)
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