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2017年12月

2017年12月13日 (水)

Critical psychology seminar in Hong Kong, December 22nd

  Are you interested in critical psychology?
  Are you in Hong Kong on 22nd, December?  (The date is changed form 20th to 22nd!!!)

  If so, why don't you come to the round-table seminar on critical psychology organized by Dr Fu Wai (Shue Yan University)?
  The seminar is part of Inter-Institutional Development Scheme Project titled
'Phenomenology : A Multidisciplinary Dialogue (UGC/IIDS15/H01/16)'. It is the final of 10 lectures.

IIDS Seminar Series Phenomenology: A multidisciplinary Dialogue (UGC/IIDS15/H01/16)
Date : December 22nd, 14:00
Place : Seminar room 610, Open University of Hong Kong

Presenter : Yasuhiro Igarashi (Yamano College of Aesthetics, Japan)
Title : What is critical psychology? : A view from Japan

  I will talk about critical psychologies and the problem of 'what is psychology actually?' based on my experience in Japan since 1990s, mentioning to philosophy, history, sociology of psychology, cultural issues and issues related to power disparities in psychology and in society among others.

  Let's share views and ideas on psychology between Japan and Hong Kong and start research together to build new ways of doing psychology critically!




2017年12月10日 (日)

トランプ米大統領のメンタルヘルス:バンディ・リー編,「ドナルド・トランプの危険な症状:27人の精神科医とメンタルヘルス専門家が大統領を査定する」

 当ブログでこれまで数度,トランプ米大統領が論敵や批判者に対して「IQが低い」といった発言を繰り返した例を記しました.

 IQは心理学が産出した「心理学知識」のひとつです.これが社会に広く普及して自然な存在になる「心理学化」の事例を,トランプ大統領の発言に見ることができます.
 この例では「自分はIQが高い」と考えるトランプ氏が,相手を非難するためにIQやIQテストという心理学知識を用いています.
 それらは誰にでも通用する自明の存在として自然化されています.

 高度に心理学化が進んだアメリカ社会では,トランプ氏も心理学や精神医学などの「サイ学問」による吟味の対象になります.
 10月に刊行された下記の本が,アメリカでベストセラーになっているそうです.

 Bandy Lee (編)「ドナルド・トランプの危険な症状:27人の精神科医とメンタルヘルス専門家が大統領を査定する」 (
Bandy X. Lee(Ed.), The Dangerous Case of Donald Trump :27 Psychiatrists and Mental Health Experts Assess a President, Thomas Dunne Books)

 ロバート・リフトン(精神医学)やフリップ・ジンバルド(社会心理学・パーソナリティ心理学)など,日本でもよく知られた研究者が同書に寄稿しています.

 昨年,米大統領選挙においてトランプ氏が有力候補に浮上したころから,同氏の言動やパーソナリティやメンタルヘルスについて「心の専門家」が発言し始めました.
 心理学知識を用いて特定の人物を「病理化」したり「異常化」することは,心理学化を推し進める結果を招きます.
 そのため当ブログでは,この問題を取り上げませんでした.

 しかし,このところのトランプ氏の振る舞いを報道をとおして見聞きしていると,精神医学者や心理学者が専門的知識やスキルを用いて同氏をどのように説明するか,知りたくなります.



 アメリカでは主要メディアがこの問題を繰り返し取り上げています.今のところ,日本語で読める記事はわずかです.
 非営利ニュースメディア,「デモクラシー・ナウ!」が12月8日に同書を詳しく報道しました.

 「ドナルド・トランプの危険な症状」精神科医バンディ・リー 大統領の精神状態への危惧を語る(http://democracynow.jp/)

 上記のニュース・サイトの説明文を転記します.
 「ドナルド・トランプ大統領が6日に行われたイスラエルに関するスピーチで,ろれつが回らず言葉を誤って発音した後,彼の精神状態に対する疑念が広がり続けています.ホワイトハウス報道官サラ・ハッカビー・サンダースは7日,高まる懸念を受けて,トランプは健康診断を受ける予定になっていると発表しました.
 一方,国防総省幹部は先月,トランプが核兵器を発射せよとの非合法な命令を出しても無視すると,上院委員会に伝えています.この証言は,核戦争を開始する大統領の権限に関して40年余りを経て初めて開かれた議会聴聞会で出てきました.
 イェール大学医学部で教える司法精神医学者で,暴力の専門家として世界的に有名なバンディ・リー医師に話を聞きます.彼女はベストセラーとなったThe Dangerous Case of Donald Trump: 27 Psychiatrists and Mental Health Experts Assess a President(『ドナルド・トランプの危険な症状:27人の精神科医とメンタルヘルス専門家が大統領を査定』)を編集しました,...」

  
   The Dangerous Case of Donald Trump

 上の番組の逐語録が,デモクラシー・ナウ!のウェブサイトで公開されています.(英語です.)(https://www.democracynow.org/2017/12/8/the_dangerous_case_of_donald_trump#transcript)
 精神医学者がトランプ氏が患っているかもしれない心の健康の問題を詳説しています.(あまりの深刻さに目まいがしそうです.)

 大統領など重職にある公人のメンタルヘルスを専門家が論じることは,今までもありました.
 デモクラシー・ナウ!などの報道の論調は,これほど多くのメンタルヘルス専門家が一致して重大な懸念を表した政治的指導者はトランプ氏が初めてだ,健康上の問題のため誤った判断(戦争など)を下す可能性がある,というものです.

 「心の健康」や「心の異常」という概念は,時代や文化や社会が異なれば,異なった仕方で概念化されうる「社会構成物」です.
 しかし心が身体,特に中枢神経系と密接に関連していることは明らかです.身体や中枢神経系は社会や文化の差違にかかわらない「自然の事物」です.
 アメリカの心の専門家がアセスしたトランプ氏の心の健康は,どこまで社会構成物もしくは自然の事物なのでしょうか.

2017年12月 7日 (木)

次回の批判心理学セッションは2月4日です

 2回目の批判心理学セッションが,12月3日に開かれました.
 下記は以前,当ブログに掲載したお知らせです.

 批判心理学セッションのお知らせ:ディスコース分析,心理学教育,イギリス批判心理学,心理学観,アメリカ心理学と対テロ戦争
(http://critical-psychology.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-5d2a.html)


 このセッションでは心理学の歴史や哲学,心理学の用語・概念のメタ学問的検討,心理学者と心理学界に影響を与える諸要因,心理臨床家やアカデミックな心理学者の心理学観,原子力発電所事故や低線量被ばくの問題と心理学など,多様なテーマをめぐって自由に活発な討議が行われました.

 現在の制度的学問としての心理学や,その背景としての心への知的関心,「科学的心理学」の基礎といった心理学者が普段,正面から考えることの少ないテーマにあれこれと思いをめぐらす貴重な機会になりました.
 私は討議を大いに楽しみました.他の参加者もそれぞれ,刺激を得られたようです.


 次回の批判心理学セッションは2月4日(日)に開かれます.詳細が決まり次第,お知らせします.
 批判心理学に関心をおもちの方のご参加を歓迎いたします.

 話題提供者も募集しています.
 心理学の研究や理論,心理臨床,教育,社会的活動,諸領域での心理学の適用など,現行の心理学に問題を見いだした方,問題意識をシェアして新しい取り組みを探究しませんか?
 発表をご希望の方は,当ブログ開設者にお知らせください.

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