« 4月8日に批判心理学セッションが開かれます | トップページ | フェイスブックの「いいね!」と心理学:ビッグデータを活用したトランプ陣営の選挙キャンペーン »

2018年3月19日 (月)

トランプ大統領が「水責めの女王」をCIA長官に指名しました:対テロ戦争における「心理学的拷問」

 3月14日にトランプ米大統領が国務長官を解任し,後任にCIA長官を指名したニュースが大きく報道されました.
 同大統領は同時に,新しいCIA長官にジーナ・ハスペル氏を指名しました.このニュースは日本のマスメディアの注目を集めていないようです.
 しかし今日の「テロとの戦い」を考える上で.重要な出来事のひとつです.


 ハスペル氏は9.11同時多発テロの後,CIAがテロ情報を得るためにテロ容疑者に対して国外の秘密拘禁施設で「強化尋問技法」を用いて「過酷尋問」を行った作戦を指揮した,と報道されています.
 この尋問では水責めなど,心身の健康に重大な悪影響を与える技法が米政府の認可の下で実施されました.
 「アメリカ政府が認めた拷問」がハスペル氏の関与の下で始まりました.

 過酷尋問に対してアメリカ内外で批判が高まり,連邦上院が調査を始めると,尋問を記録した多数の録画テープが破壊されました.
 ハスペル氏が破壊を指示した,と報道されています.もし過酷尋問の実態が映像で公開されれば,当時のブッシュ政権や米政府は重大なダメージを受けたことでしょう.

 当ブログで以前に数度,サウジアラビア人のアブ・ズベイダ容疑者が2002年にパキスタンでCIAに捕捉され,タイの秘密拘禁施設に移送されて,2名の軍事心理学者によって水責めを含む強化尋問技法を用いた過酷尋問を受けた問題を取り上げました.
 この作戦を指揮したのはハスペル氏です.

 CIAによるテロ容疑者への過酷尋問は,「自由の国」,「人権を重んじる国」を理想として掲げてきたアメリカの変化を示す歴史的な事件のひとつだと言われています.
 その責任者がアメリカ政府を代表する情報機関のトップに指名されるとは,トランプ氏が米大統領に選出される前には想像できなかったことです.

 昨年,トランプ米大統領によってCIA副長官に指名されるまで,ハスペル氏の名前も写真も公表されることはありませんでした.同氏がCIAの秘密工作部門の要員だったためです.


 今後,「過酷尋問は拷問ではない.テロ対策の一環として必要である」という意見がトランプ政権のもとで,再び強まる可能性があります.

 ただし,上院が上記の問題を理由としてハスペル氏のCIA長官への就任を認めないのでは,という指摘もあります.
 また,同氏がドイツなどに入国した場合は,人道に対する犯罪の嫌疑のために身柄を拘束される可能性がある,という報道もあります.拷問は国連拷問禁止条約や戦争捕虜の保護を定めたジュネーブ条約に違反する重大な犯罪だと考えられています.

 この問題に関心をおもちの方は,下記の報道をご参照ください.

AFP通信(3月14日) 「拷問関与を議員ら批判,米CIA長官指名のハスペル氏」http://www.afpbb.com/articles/-/3167299

中日新聞(3月14日) 「史上初の女性CIA長官に ベテラン捜査官ハスペル氏」http://www.chunichi.co.jp/s/article/2018031401000687.html

ブルームバーグ(3月14日) 「次期CIA長官指名のハスペル氏,拷問関与疑惑を問題視される可能性」 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles



« 4月8日に批判心理学セッションが開かれます | トップページ | フェイスブックの「いいね!」と心理学:ビッグデータを活用したトランプ陣営の選挙キャンペーン »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 4月8日に批判心理学セッションが開かれます | トップページ | フェイスブックの「いいね!」と心理学:ビッグデータを活用したトランプ陣営の選挙キャンペーン »