アメリカ質的心理学会大会のプログラム
アメリカ質的心理学会(Society for Qualitative Inquiry in Psychology)の年次大会が5月21,22日にピッツバーグのデュケイン大学で開催されます.
大会プログラムが同学会のウェブサイトで公開されました(http://qualpsy.org/).
プログラムをみると,質的心理学のさまざまな研究方法やそれを支える哲学,コミュニティがかかえる実生活の諸問題への取り組み,心理臨床や福祉,心理学教育,諸国の研究動向など,心理学における質的研究にかかわる主題が幅広く論じられるようです.
1年前に2017年の大会のプログラムをみたときは特に関心をもたなかったのですが,今年のそれは一見しておもしろそうです.
大会はデュケイン大学で開催されます.
同大学でアメディオ・ジオルジが1960年代後半から現象学的心理学の研究と教育に取り組み,多くの研究者を養成しました.北米における質的心理学の最重要拠点のひとつです.
現象学的心理学に関する発表もプログラムに多く記載されています.同大学ではコミュニティの諸問題の実践的研究も盛んなようです.
50年前にジオルジが始めた質的心理学の研究・教育プロジェクトが実を結びました.質的心理学に関する学術会議の開催校にふさわしい大学ですね.
(ジオルジ先生,おめでとうございます!長い間,ありがとうございました.)
1980年代から2010年代まで,ジオルジの邦訳書が3冊,刊行されています.
1980-90年代に主流のアメリカ心理学とは異なる心理学を模索していた日本の心理学者に,貴重な示唆を与えてくれました.
私もそのひとりです.ゼロ年代に数度,国際学会でお目にかかる機会があり,ひたむきに現象学的心理学に取り組む姿を瞥見して強い印象を受けました.
アメディオ・ジオルジ 「現象学的心理学の系譜:人間科学としての心理学」(早坂泰次郎訳 勁草書房 1981)
アメディオ・ジオルジ 「心理学の転換:行動の科学から人間科学へ」(早坂泰次郎訳 勁草書房 1981)
アメディオ・ジオルジ 「心理学における現象学的アプローチ:理論・歴史・方法・実践」(吉田章宏訳 新曜社 2013)
アメリカ質的心理学会は2011年にアメリカ心理学会の第5部会(量的方法と質的方法)のサブ部会となりました.
学会の公式ジャーナル「Qualitative Psychology」もお薦めです.面白い研究がたくさん掲載されています.(http://www.apa.org/pubs/journals/qua/ )
5月にアメリカ質的心理学会の大会の他に,国際質的研究学会の年次大会もイリノイ州で開かれます(http://critical-psychology.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/14-6800.html).
質的心理学者がウキウキする季節になりました.
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