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2018年4月

2018年4月26日 (木)

批判心理学セッションが5月26日(土)に開かれます

 第5回批判心理学セッションが,5月26日(土)に開かれます.

 原子力発電所事故のディスコース分析,心理学教育と対テロ戦争における「心理学的拷問」,クラウス・リーゲルの弁証法的心理学やその他の主題について話題提供が行われる予定です.

 会場は前回と同様に,静岡大学東京事務所です.(東京工業大学キャンパス・イノベーションセンター内.JR山手線・京浜東北線,田町駅下車.芝浦口徒歩1分
 午後2時,開始です.


 話題提供者を募集しています.当ブログ開設者にお知らせください.
 参加費は無料です.

 批判心理学に関心をおもちの方なら,どなたでも参加できます.
 気軽にご参集ください.



2018年4月19日 (木)

アメリカ質的心理学会大会のプログラム

 アメリカ質的心理学会(Society for Qualitative Inquiry in Psychology)の年次大会が5月21,22日にピッツバーグのデュケイン大学で開催されます.
 大会
プログラムが同学会のウェブサイトで公開されました(http://qualpsy.org/)

 プログラムをみると,質的心理学のさまざまな研究方法やそれを支える哲学,コミュニティがかかえる実生活の諸問題への取り組み,心理臨床や福祉,心理学教育,諸国の研究動向など,心理学における質的研究にかかわる主題が幅広く論じられるようです.

 1年前に2017年の大会のプログラムをみたときは特に関心をもたなかったのですが,今年のそれは一見しておもしろそうです.

 大会は
デュケイン大学で開催されます.
 同大学でアメディオ・ジオルジ
1960年代後半から現象学的心理学の研究と教育に取り組み,多くの研究者を養成しました.北米における質的心理学の最重要拠点のひとつです.

 現象学的心理学に関する発表もプログラムに多く記載されています.同大学ではコミュニティの諸問題の実践的研究も盛んなようです.
 50年前にジオルジが始めた質的心理学の研究・教育プロジェクトが実を結びました.質的心理学に関する学術会議の開催校にふさわしい大学ですね.
 (ジオルジ先生,おめでとうございます!長い間,ありがとうございました.)

 1980年代から2010年代まで,ジオルジの邦訳書が3冊,刊行されています.
 1980-90年代に主流のアメリカ心理学とは異なる心理学を模索していた日本の心理学者に,貴重な示唆を与えてくれました.
 私もそのひとりです.ゼロ年代に数度,国際学会でお目にかかる機会があり,ひたむきに現象学的心理学に取り組む姿を瞥見して強い印象を受けました.

  アメディオ・ジオルジ 「現象学的心理学の系譜:人間科学としての心理学」(早坂泰次郎訳 勁草書房 1981)
  アメディオ・ジオルジ 「心理学の転換:行動の科学から人間科学へ」(早坂泰次郎訳 勁草書房 1981) 
  アメディオ・ジオルジ 「心理学における現象学的アプローチ:理論・歴史・方法・実践」(吉田章宏訳 新曜社 2013)



 アメリカ質的心理学会は2011年にアメリカ心理学会の第5部会(量的方法と質的方法)のサブ部会となりました.

 学会の公式ジャーナル「Qualitative Psychology」もお薦めです.面白い研究がたくさん掲載されています.(http://www.apa.org/pubs/journals/qua/ )

 5月にアメリカ質的心理学会の大会の他に,国際質的研究学会の年次大会もイリノイ州で開かれます(http://critical-psychology.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/14-6800.html)

 質的心理学者がウキウキする季節になりました.



2018年4月15日 (日)

アメリカ心理学会の質的論文ガイドライン

 先日,イギリス心理学会が学術雑誌における質的研究の重要性をあらためて提起する声明を発表した,と当ブログでお知らせしました.

 大西洋を挟んで北米では,アメリカ心理学会(APA)の研究論文の刊行に関するタスクフォースが,質的研究法や混合研究法を用いて行われた研究を論文化する上で参照すべき基準をまとめました.
 アメリカン・サイコロジスト誌で発表されました.


報告書のタイトル:
 「質的研究,質的メタ分析と混合法による心理学研究を報告するジャーナル論文の標準:APA論文刊行とコミュニケーション委員会タスクフォースの報告(Journal Article Reporting Standards for Qualitative Primary, Qualitative Meta-Analytic, and Mixed Methods Research in Psychology: The APA Publications and Communications Board Task Force Report)」

著者:
 Levitt,H.,Bamberg,M.,Creswell,J.,Frost,D.,Josselson,R.,& & Suárez-Orozco,C.

発表誌:

 American Psychologist, 2018, Vol.73, No.1, Pp.26–46



 心理学だけでなく社会科学の多くの領域で,アメリカ心理学会の論文記述様式(APAスタイル)が定番になっています.

 量的心理学の一部が科学主義の傾向を強め心理学研究が阻害されたことへの反省から,質的心理学者の中には過度に形式化された論文の記述スタイルを避ける傾向がみられます.

 しかし質的研究が普及すると,論文の質を保つために記述様式の基準を求めるニーズも強まります.
 研究の目的や方法,研究資料の分析,考察など,論文の各節で何をどのように述べたらよいか,留意すべき諸点が明確に示されれば,論文を書く人にも論文を査読する人にも便利です.
 アメリカン・サイコロジスト誌に発表された上記の報告は,質的研究による論文の執筆者と査読者のニーズに応えるものです.

 この報告の「研究の目的」の節をみると,
 「研究に用いるアプローチを説明しなさい.例)記述的方法,解釈的方法,フェミニスト研究,精神分析,ポスト構造主義,構成主義,批判的方法,ポストモダン,プラグマティックなアプローチ」,
 といった説明がみられます.

 アメリカ心理学会の会員が同学会の旗艦誌である「アメリカン・サイコロジスト」に掲載された同学会のタスクフォースの報告書で,フェミニスト心理学や批判心理学,ポスト構造主義的心理学などを推奨される時代が訪れたようです.

 アメリカの心理学者の間で質的研究がある程度まで受け入れられ,その中に批判的研究が含まれていることが伺われます.


2018年4月 3日 (火)

イギリス心理学会の声明:学術雑誌における質的研究の重要性

 イギリス心理学会が3月27日に声明を発表し,学術雑誌における質的研究の重要性を強調しました.

 「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」や「ジャーナル・オブ・チャイルド・アンド・ファミリースタディーズ」などが編集指針を改訂し,質的研究を受け入れない方針を示したことに反対を唱えています.

 上記の学術雑誌が質的方法を用いて行われた研究の掲載を止める理由として,
「優先度が低い」,「他の研究者によって引用されない」,「実用的な価値が低い」といったことが挙げられています.
 
 これらは良い研究かどうかを判断する基準の一部でしょう.
 しかし質的研究だから上記を満たさない,というわけではありません.量的研究など質的研究とは異なる方法を用いて行われる研究も,それらを満たさない場合もあります.
 良い研究もあれば悪い研究もあるのは,質的研究も量的研究も同じことです.

 上記の学術雑誌の編集委員会がもしも,質的研究だから悪い研究だ,と考えているなら,科学ではなく「科学主義」の悪しき例の一つです.
 研究対象の質を観察し記述して詳細に分析する研究方法が,科学研究において重要なことは明らかではないでしょうか.


 下記のサイトでイギリス心理学会の声明文が公開されています.
 https://www.bps.org.uk/news-and-policy/statement-qualitative-research-journals

 下に全文を引用します

「Statement on qualitative research in journals

                       27 March 2018

 As the learned society and professional body for psychology in the UK, the British Psychological Society is concerned in relation to the adoption of a revised editorial policy by some journals (including the Journal of Child and Family Studies and the British Medical Journal) to stop accepting submissions of qualitative research.

 We are particularly concerned at the claims that such studies are “low priority”, “unlikely to be highly cited”, “lacking practical value”, or “not of interest to our readers”.

 Qualitative research is now widely recognised as an important aspect of scientific work.  Whilst some research may be considered of “lacking practical value” or of “low quality”, the same argument can be made for research utilising other methodological approaches and techniques, and are not issues that are restricted to qualitative research alone.

 There is a risk that editorial decisions of this nature will begin to shape the discipline, instead of the discipline being shaped by the activity of the broader community of researchers.

 We wish to reiterate that the Society’s editorial policy across our portfolio of journals (published in partnership with Wiley) remains open to submissions of high quality research from all methodological approaches.


  Professor Daryl O'Connor (Chair, Research Board)
  Professor Andy Tolmie (Chair, Editorial Advisory Group)  」




  



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