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2018年4月15日 (日)

アメリカ心理学会の質的論文ガイドライン

 先日,イギリス心理学会が学術雑誌における質的研究の重要性をあらためて提起する声明を発表した,と当ブログでお知らせしました.

 大西洋を挟んで北米では,アメリカ心理学会(APA)の研究論文の刊行に関するタスクフォースが,質的研究法や混合研究法を用いて行われた研究を論文化する上で参照すべき基準をまとめました.
 アメリカン・サイコロジスト誌で発表されました.


報告書のタイトル:
 「質的研究,質的メタ分析と混合法による心理学研究を報告するジャーナル論文の標準:APA論文刊行とコミュニケーション委員会タスクフォースの報告(Journal Article Reporting Standards for Qualitative Primary, Qualitative Meta-Analytic, and Mixed Methods Research in Psychology: The APA Publications and Communications Board Task Force Report)」

著者:
 Levitt,H.,Bamberg,M.,Creswell,J.,Frost,D.,Josselson,R.,& & Suárez-Orozco,C.

発表誌:

 American Psychologist, 2018, Vol.73, No.1, Pp.26–46



 心理学だけでなく社会科学の多くの領域で,アメリカ心理学会の論文記述様式(APAスタイル)が定番になっています.

 量的心理学の一部が科学主義の傾向を強め心理学研究が阻害されたことへの反省から,質的心理学者の中には過度に形式化された論文の記述スタイルを避ける傾向がみられます.

 しかし質的研究が普及すると,論文の質を保つために記述様式の基準を求めるニーズも強まります.
 研究の目的や方法,研究資料の分析,考察など,論文の各節で何をどのように述べたらよいか,留意すべき諸点が明確に示されれば,論文を書く人にも論文を査読する人にも便利です.
 アメリカン・サイコロジスト誌に発表された上記の報告は,質的研究による論文の執筆者と査読者のニーズに応えるものです.

 この報告の「研究の目的」の節をみると,
 「研究に用いるアプローチを説明しなさい.例)記述的方法,解釈的方法,フェミニスト研究,精神分析,ポスト構造主義,構成主義,批判的方法,ポストモダン,プラグマティックなアプローチ」,
 といった説明がみられます.

 アメリカ心理学会の会員が同学会の旗艦誌である「アメリカン・サイコロジスト」に掲載された同学会のタスクフォースの報告書で,フェミニスト心理学や批判心理学,ポスト構造主義的心理学などを推奨される時代が訪れたようです.

 アメリカの心理学者の間で質的研究がある程度まで受け入れられ,その中に批判的研究が含まれていることが伺われます.


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