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2018年12月19日 (水)

批判心理学を知るために:ヴィヴィアン・バー 著「ソーシャル・コンストラクショニズム:ディスコース・主体性・身体性」

 大学などの心理学入門の授業ではたいてい,心理学は「心と行動の科学」だと教えられています.これは1930年代にアメリカで成立した新行動主義から,1950‐60年代にコンピュータ科学などの成果を取り入れて認知行動主義へと発展した現在の「主流心理学」の心理学観を表した心理学の定義です.

 認知行動主義的アプローチに依拠する「主流心理学」が抱える問題点を現在,日本でも他の国・地域でも多くの心理学者が自覚し,その解決に取り組んでいます.
 そのためには心理学の存在論や認識論など,哲学の水準で「主流心理学」を検討して新しい心理学の哲学を,それに支えられた研究方法論を構築しなければなりません.

 さまざまな可能性が探究され,
新しいアプローチが生み出されてきました.社会構成主義はその主要なひとつです.
 心理学の研究対象を「客観的,普遍的なもの」としてでなく,ある文化や社会の文脈において,特定の言語を用いて集合的に構成されたもの,という見方で研究しています.

 イギリスの批判心理学者,ヴィヴィアン・バー(Vivien Burr)の定評ある社会構成主義の教科書が邦訳されました.2015年に刊行された第3版の日本語訳です.

 ヴィヴィアン・バー (著)「ソーシャル・コンストラクショニズム:ディスコース・主体性・身体性」 田中 一彦 ・大橋 靖史 (訳),川島書店,2018


 社会構成主義に関する数多くの研究を引用して,各種の異なる立場を説明しています.訳文も読みやすく,優れた仕事を分かりやすい日本語で読む楽しみを味わえます.
 批判心理学とディスコース分析の入門書としても,お勧めできます.

 著者のバー氏はイングランド北部にあるハダースフィールド大学心理学科の「批判心理学教授」を自称しています.
 イギリスは最も批判心理学が盛んな国のひとつです.本書から1980年代以降に当地で興った「イギリス批判心理学」やディスコース分析の考え方を知ることができます.
   
 下に目次をお示しします.   
第1章 ソーシャル・コンストラクショニズムとは何か
第2章 ソーシャル・コンストラクショニズムの主張
第3章 ソーシャル・コンストラクショニズムにおける言語の役割
第4章 ディスコースとは何か
第5章 ディスコースの外に実在世界は存在するか
第6章 巨視的ソーシャル・コンストラクショニズムにおけるアイデンティティと主体性
第7章 微視的ソーシャル・コンストラクショニズムにおけるアイデンティティと主体性
第8章 ソーシャル・コンストラクショニズムの探究
第9章 ソーシャル・コンストラクショニズムにおける問題と論争



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