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2019年5月15日 (水)

「資本主義の病理学」という心理学の国際会議

 コスタリカの心理学者から来春,当地で開かれる国際会議の知らせが届きました.
 その国際会議は「資本主義の病理学に関するコスタリカ会議2020(PATHOLOGIES OF CAPITALISM
COSTA RICA 2020)」です.

 心理学者が主催し,世界各地から心理学者が集う学術会議が「資本主義の病理学」と題されていることに,驚かれた方も多いことでしょう.
 心理学がなぜ,政治経済の問題である資本主義とかかわりがあるのだろうか,と疑問に思われたなら,自分の心観を振り返えるよい機会です.

 認知行動主義的アプローチをとる「主流心理学」では,心理学は「心と行動」の科学と定義づけられています.
 しかしこの立場はすでに,特定の心理学の哲学に依拠しています.
 素直に字義通りに考えれば,心理学は「心を研究対象とする学問」でしょう.

 北米で生まれ発展した認知行動主義は個人の内部に閉じた心が行動に反映される,という心理学の哲学を採用しています.
   ここには北米の個人主義的な文化が表れている,とかねて多くの理論心理学者や批判心理学者が指摘してきました.
 もともと北米社会の文化や価値観に根差したものだったので,「個人の内部に閉じた心」という心観が北米社会で自明視されるようになった,といえそうです.

 しかし,それにとどまらず心に影響を与え,その在り方を規定している個人を超えた諸要因ー政治経済や社会構造,文化などーを検討することも可能です.
 特に20世紀末以降,北側諸国が推し進めた新自由主義経済政策の下でグローバル競争が激化し,世界の多くの国・地域の雇用や物価に影響するようになりました.福祉や文教,環境などに関わる政府の政策が改悪されるなど,人々の生活に大きな影響を及ぼしています.
 それが個人の心のあり方や心身の健康に関わることは言うまでもありません.
 そこで「資本主義の病理学」という視点が重要だと考える心理学者が,世界各地で同時多発的に現れました.

 2020年会議は来年4月1日から3日まで,コスタリカ大学で開催されます.詳細はメール(patologiasdc@gmail.com )にて問い合わせてください.
 イグナティオ・ドブルス・オロペザ(Ignacio Dobles Oropeza)教授を中心に,コスタリカ大学の心理学者たちが国際会議を主催します.

 「資本主義の病理学」に関する心理学の国際会議は昨秋,ニューヨークで1回目の会議が開かれました.
 この会議は50人の招待者に限定されたクローズドなものでしたが,思いがけず,私も招待状を受け取りました.
 せっかくの機会ですので参加したところ,旧知の批判心理学者や心理学史研究者も出席していました.
 心理学の諸領域や関連する諸学問の多様な視角から資本主義の政治経済と心の関係をめぐって発表と活発な討議が行われました.私も他の出席者たちも,多くの新しい知的刺激を受けました.
 今後,こうして共有された経験から,世界の各地で新しい心理学が生まれてくることでしょう.

 来春開かれる「資本主義の病理学に関するコスタリカ会議2020(PATHOLOGIES OF CAPITALISM
COSTA RICA 2020)」はそのひとつです.
 この国際会議は招待者限定ではなく,世界の多くの心理学者と心理学に関心を持つ諸学問の研究者に開かれています.

 

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