第8回国際コミュニティ心理学会議(2020年6月26-28日,メルボルン)
第8回国際コミュニティ心理学会議が,来年6月26日から28日までオーストラリアで開かれます.
会場はビクトリア大学(メルボルン)です.
コミュニティ心理学は北米心理学など,個人主義的な心理学観に基づく研究や心理臨床実践が支配的な心理学界において,「主流心理学」が直面している課題に取り組む批判心理学の先駆けとして長年,重要な役割を果たしてきました.
第2次世界大戦後に国際心理学界を主導してきた北米心理学は,「個人の内部に閉じた心」を研究対象としています.
外部からの入力(独立変数)が個人の心的過程(媒介変数)での内潜的な処理を経て,反応・行動(従属変数)として出力・測定されるという心観です.
しかし心をひとりの個人の中で閉じたものとしてではなく,身近な他者や家庭,地域社会,学校や職場などのコミュニティ,さらに政治経済や諸制度などの社会構造と個人の心の関りにおいて研究することもできます.
批判コミュニティ心理学は,北米主流心理学を制約している「過度の個人主義」を超えるアプローチを探究してきました.
アメリカのコミュニティ心理学が1960年代に出立してから,長い時間が経ちました.
当初,アメリカのコミュニティ心理学は1960年代のアメリカ社会に広がっていた進歩的な気風を反映して,批判的なアプローチも採用していたのですが,他の多くの心理学の下位領域と同様,次第に「主流心理学」に組み込まれていきました.
(それでも私が見聞した限りでは,「統治や管理の機構のために働くエージェントに成り下がった臨床心理学よりはましだ」と世界の批判コミュニティ心理学者は考えているようです.臨床心理学者の皆さん,ごめんなさい.)
コミュニティ心理学は日本の心理学教育で,もっと多くの時間と頁数を当てて紹介されるべき有用な領域です.
心理学概論書でコミュニティ心理学の意義が詳しく説明され,批判コミュニティ心理学の日本語教科書が刊行されることが待望されています.
(日本のコミュニティ心理学者の皆さん,よろしくお願いします!批判コミュニティ心理学を忘れないでください!)
第8回国際コミュニティ心理学会議のおもな主題は,下記のとおりです.
・持続可能な未来のための知識(Knowledge for sustainable futures)
・多様な人々が参加できる文化と健康なコミュニティの創造(Creating inclusive culture and healthy communities)
・境界での活動(Working the boundaries)
・グローバルな動力学のローカルな表出(Global dynamics in local expressions
発表申し込みの締め切りは,8月2日です.
詳細については,下記の公式ウェブサイトをご覧ください.
https://communitypsychologyaustralia.com.au/index.html
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