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2019年11月18日 (月)

アメリカの公共放送NPRが「エルサルバドルの虐殺」の30周年について報道しました:マルティン‐バロ(1942‐1989)の解放の心理学

 アメリカの公共放送 NPRが,1989年11月16日におきた「エルサルバドルの虐殺」から30年が経った機会に,生存者や目撃者など,当事者の声を報道しました.

 30年前のこの日,中米のエルサルバドルにあるセントラル・アメリカ大学構内の教職員宿舎で深夜,6名のイエズス会神父と宿舎の調理師,その16歳の娘が銃殺されました.
 米国の軍事支援を受けた軍隊(いわゆる「死の部隊」)が同大学を襲い,教職員と家族を殺害した事件は当時,世界に衝撃を与えました.
 ラテンアメリカ諸国への米国の政治的介入や軍事支援の実態に,改めて注目が集まりました.

 下のNPRのウェブサイトで,30周年に配信された記事とラジオ放送にアクセスできます.

 1989年にエルサルバドルで起きたイエズス会士の虐殺を記憶する(Remembering The 1989 Massacre Of Jesuits In El Salvador
(https://www.npr.org/2019/11/15/779628824/remembering-the-1989-massacre-of-jesuits-in-el-salvador?fbclid=IwAR2p8pper2BAo7OkUkZy6tT-9nruvw98Y9-c-2PT59QoBPY5yG_yoK5nqDQ)

 「いつも彼らを思い出しています」:目撃者が1989年のエルサルバドルでのイエズス会士虐殺を語る('I Miss Them, Always': A Witness Recounts El Salvador's 1989 Jesuit Massacre)
(https://www.npr.org/2019/11/16/774176106/i-miss-them-always-a-witness-recounts-el-salvador-s-1989-jesuit-massacre)


 銃殺された犠牲者のひとりは,解放の心理学を樹立し実践したスペイン出身の心理学者,イグナシオ・マルティン‐バロ(Ignacio Martín-Baró,1942‐1989)です.
 彼は社会心理学者として,カソリックの宗教者としてエルサルバドル政府の圧政や激しい経済格差,それらの人々の生活への悲惨な影響などを心理学研究をとおして批判していました.

 そのため,彼の仕事は当時の政権や右派勢力に疎まれました.
 同じように貧困者や政治的抑圧を受ける弱者の側に立ち,社会正義を求めて活動していた同僚の神父と,虐殺が行われた教職員宿舎の調理師とその子どもとともに,軍兵士によって殺害されてしまいました.
 
 マルティン‐バロがスペイン語で書いた論文が英訳され,手軽に読むことができます.
    Writings for a Liberation Psychology (Ignacio Martín-Baró, 1996, Harvard University Press)

   Writings for a Liberation Psychology


 ラテンアメリカでは彼が活躍する前から,解放の神学や解放の教育学が発展していました.
 解放の心理学もラテンアメリカ諸国が共有する政治的,経済的,文化的文脈(貧困や格差,米国の強大な力,カソリック信仰など)を背景として,それらの影響を受けて生まれました.
 マルティン‐バロの没後,解放の心理学は社会心理学を中心に多くの研究やコミュニティでの実践を生み出しました.
 今日までに北米の主流心理学とは異なるアプローチを代表する批判心理学(非主流心理学)のひとつへと発展しています.




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