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2020年8月

2020年8月29日 (土)

心理学のデコロナイゼーション:フェミニズム&サイコロジー誌の特集号

 心理学の’デコロナイゼーション(脱植民地化)’と聞いて,どう思われるでしょうか.
 心理学と植民地,脱植民地化など,何やら政治的で科学である心理学にはふさわしくない,という印象を抱く人も多いことでしょう.

 しかし,心理学の脱植民地化は21世紀における心理学史の新展開や批判心理学に関心をもつ研究者にとって,重要な研究主題です.それは近い将来,心理学の針路を左右しうる深刻な問題だと考えられています.

 19世紀後半に現代心理学が生まれ,今日,私たちの眼前にあるものへと発展する軌道に乗ってから,西洋心理学(第2次大戦以降は特にアメリカ心理学)が「客観的な人間一般の科学的心理学」だと考えられてきました.
 しかし現在,それが「北側先進国の,特に西洋の白人の,中流階級の,社会の主流にある人々の心理学」ではないかという問いが,南側諸国の心理学者や社会の主流に属さないマイノリティや抑圧されてきた人々から問い掛けられています.

 フェミニズム&サイコロジー誌の特集号「心理学のデコロナイゼーション」は,その最近の現れのひとつです.
 南側諸国のフェミニスト心理学者やLGBTQ+心理学の当事者であるフェミニスト心理学者などの研究によって,「欧米の白人による主流フェミニスト心理学」とは異なるアプローチの必要性が明らかになりました.
 女性であること,経済的,政治的,文化的勢力において北側に従属する南側の住民であること,性的マイノリティであることなどの諸要因が交差するインターセクショナリティが抑圧や貧困のような現実の問題を理解する鍵概念です.

 この特集号の巻頭論文がインターネット上で公開されています.
 Feminisms and decolonising psychology: Possibilities and challenges
    by Catriona Ida Macleod, Sunil Bhatia, Wen Liu (https://doi.org/10.1177/0959353520932810)
    (https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0959353520932810)

 
    Issues



 

 

 

 

2020年8月20日 (木)

アクロン大学心理学史センターがアシスタント・ディレクターを公募しています.

 アメリカのアクロン大学(オハイオ州,アクロン市)は心理学史に関心をもつ人々に,心理学史の研究拠点として知られています.
 同大学心理学史センターのウェブサイト(https://www.uakron.edu/chp/)には,心理学史に関する有用な情報が多数掲載されています.

 アメリカ心理学史アーカイブや心理学ナショナル・ミュージアムを運営する同大学カミングス心理学史センターが,アシスタント・ディレクターを公募しています.
 フルタイムの常勤職です.給与は職歴等を考慮して決められるそうです.
 詳細は下のウェブサイトをご覧ください.
  Job Title:Assistant Director(https://www.uakron.edu/hr/job-openings/openings.dot?fbclid=IwAR2WlPMaBETTybSBmyrOk6Rybon1xwgGl4iJEElXJiZ0VxdYBuvS89ZQT6w)

 長年,アクロン大学心理学史センター長として心理学史アーカイブの発展と心理学ミュージアムの創設のために尽力されたデイビッド・ベイカー教授が6月に引退されました.アシスタント・ディレクターとしてベイカー教授を支えてきたキャシー・フェイ博士が後任のセンター長に就きました. 
(ベイカー先生,長いあいだ,ありがとうございました!)
 今回の公募人事はフェイ博士の後任を採用するものです.

 アクロン大学心理学史センターの副ディレクターの職域は心理学史の研究や教育,公共への情報発信など多方面にわたり,心理学と心理学史研究の発展に寄与する重要な役割を果たしえます.
 どなたか,応募しませんか?


 以前,当ブログでアメリカ心理学ミュージアムを取りあげました.
 よろしければご笑覧ください.
  アメリカ心理学ミュージアムの展示施設がオープンしました(http://critical-psychology.cocolog-nifty.com/blog/2018/07/post-cfcc.html






   

  

2020年8月14日 (金)

批判心理学ジャーナルの創刊号

  批判心理学の新ジャーナル,「アライ(Awry):批判心理学ジャーナル(Awry: Journal of Critical Psychology )」の第1号が刊行されました.
 アライ(Awry)は聞きなれない言葉ですが,「斜めに」といった意味の英単語です.ジジェクの著書「斜めから見る:大衆文化を通してラカン理論へ (Looking Awry: An introduction to Jacques Lacan through popular culture」(1991)から想を得て,新ジャーナルのタイトルがつけられました.
 論文の投稿にも,論文を読むのにも費用はかかりません.論文はインターネットで公開されています.本当の意味でオープンアクセス・ジャーナルだと言えます(https://awryjcp.com/index.php/awry).

 新雑誌の発刊は世界の批判心理学者の間で,話題になっています.
 批判心理学に関心をお持ちの方におすすめです.


 創刊号に収録された論文は下記のとおりです.

1.Michael Arfken:Critical Psychology in an Age of Uncertainty

2.Ian Parker:Psychology Through Critical Auto-Ethnography: Instituting Education

3.Meghan George, Susannah Mulvale, Tal Davidson, Jacy Young, Alexandra Rutherford:Disrupting Androcentrism in Social Psychology Textbooks : A Call for Critical Reflexivity

4.David Fryer, Charles Marley, Rose Stambe:The Reproduction of Compliant Labour Power Through (Re)Constitution of the Child and Adult Subject: Critical Knowledge-Work

5.Peiwei Li, Tyler Banks:Understanding and Theorizing the Pursuit of Intersubjective Recognition

6.Nia Phillips:The Influence of Critical Consciousness-Based Education on Identity Content and Perceptions of Sexism

7.Antonio Euzébios Filho, Raquel Souza Lobo Guzzo:What Do Young Brazilian Students Think About Socialism? Class-Consciousness Past, Present and Future
Reviews

8.Emese Ilyes:Psychology Through Critical Auto-Ethnography: Academic Discipline, Professional Practice and Reflexive History by Ian Parker

AWRY Journal of Critical Psychology


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