心理学のデコロナイゼーション:フェミニズム&サイコロジー誌の特集号
心理学の’デコロナイゼーション(脱植民地化)’と聞いて,どう思われるでしょうか.
心理学と植民地,脱植民地化など,何やら政治的で科学である心理学にはふさわしくない,という印象を抱く人も多いことでしょう.
しかし,心理学の脱植民地化は21世紀における心理学史の新展開や批判心理学に関心をもつ研究者にとって,重要な研究主題です.それは近い将来,心理学の針路を左右しうる深刻な問題だと考えられています.
19世紀後半に現代心理学が生まれ,今日,私たちの眼前にあるものへと発展する軌道に乗ってから,西洋心理学(第2次大戦以降は特にアメリカ心理学)が「客観的な人間一般の科学的心理学」だと考えられてきました.
しかし現在,それが「北側先進国の,特に西洋の白人の,中流階級の,社会の主流にある人々の心理学」ではないかという問いが,南側諸国の心理学者や社会の主流に属さないマイノリティや抑圧されてきた人々から問い掛けられています.
フェミニズム&サイコロジー誌の特集号「心理学のデコロナイゼーション」は,その最近の現れのひとつです.
南側諸国のフェミニスト心理学者やLGBTQ+心理学の当事者であるフェミニスト心理学者などの研究によって,「欧米の白人による主流フェミニスト心理学」とは異なるアプローチの必要性が明らかになりました.
女性であること,経済的,政治的,文化的勢力において北側に従属する南側の住民であること,性的マイノリティであることなどの諸要因が交差するインターセクショナリティが抑圧や貧困のような現実の問題を理解する鍵概念です.
この特集号の巻頭論文がインターネット上で公開されています.
Feminisms and decolonising psychology: Possibilities and challenges
by Catriona Ida Macleod, Sunil Bhatia, Wen Liu (https://doi.org/10.1177/0959353520932810)
(https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0959353520932810)