シンポジウム:「科学的」な心理学は客観的で普遍的で価値中立的なのだろうか?(日本心理療法統合学会第3回学術大会)
3月18日に開催される日本心理療法統合学会第3回大会において,批判心理学の立場から「『科学的』な心理学は客観的で普遍的で価値中立的なのだろうか?」という,学問の根幹にかかわる問題を論じるシンポジウムが開催されます.
シンポジウム 「科学的」な心理学は客観的で普遍的で価値中立的なのだろうか?
企画者:杉原 保史(京都大学)
司会者:茅野 綾子(国立がん研究センター)
話題提供者:五十嵐 靖博(山野美容芸術短期大学)
話題提供者:和田 香織(カルガリー大学)
シンポジウムの概要
「心理療法やその背後にある心理学は「客観的で普遍的な科学であり、文化や価値からは独立したものである」という見方がある。このような見方は、「心理療法は科学的な知見に導かれて普遍的な仕方で適用されうるものだ」という考えを導きやすい。
他方、心理学や心理療法は文化に埋め込まれたものであり、心理療法は文化的実践だという見方もある。もしそうであるならば、心理療法の基礎にある心理学を普遍的に正しいとする見方に基づく心理療法の実践は、クライエントの文化を否定することになり、クライエントを害してしまう危険性があるということになる。
心理療法の統合においては、心理療法を個々のクライエントに適合させることが重要な関心事である。それゆえ「『科学的』な心理学は客観的で普遍的で価値中立的なのか?」という問いは心理療法の統合にとって非常に重要なものである。
心理療法の多くは欧米文化圏において発展してきたため、暗黙のうちに欧米文化における主流の価値が反映されている可能性がある。心理支援の領域においては、特にフェミニスト・カウンセリング、多文化間カウンセリング、社会正義カウンセリングにおいて、こうした可能性が深く考察されてきた。心理支援に限定せず、心理学全体に目を向けてみると、批判心理学は、主流の心理学が「客観的で科学的な人間一般の心理学」のよそおいのもとで、特定の文化的価値を自然化し,人々にときにマイナスの影響を及ぼす可能性に注目し、それを乗り越えるための議論を重ねてきた。
本シンポジウムでは、杉原の趣旨説明の後、五十嵐は批判心理学の観点から、和田は社会正義アプローチの観点から、それぞれ話題提供する。その上で、みなさんと一緒にこの問いについて考えてみたい。」
このシンポジウムはオンサイト(会場は神奈川大学横浜キャンパス3号館,16時30分から18時まで)と動画配信のハイブリッド形式で開催されます.
2名の話題提供者は,ともに批判心理学者です.
おもに心理療法を実践する大会参加者のみなさんに,批判心理学の多様な視座(たとえば批判的理論心理学や社会正義アプローチ)から,問題提起や情報提供を行いたいと考えています.
参加を希望される方は,日本心理療法統合学会第3回大会のウェブサイト(https://jspi.fjss.jp/)をご参照ください.
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